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だから、僕は何度でも言う。あなたには幸せになってほしい

今日の書き手:古越 幸太

 

NHKクローズアップ現代の書き起こし記事を読みました。

あしたが見えない  - NHK クローズアップ現代

この性産業というのが、実際、職と共に、住宅であるとか、夜間や病児の保育も含めた保育にまで、しっかりとしたセーフティーネットになってしまっていて、じゃあ実際それが公的なところで、こんなに包括的なサービスが受けられるかといわれると、そうではないというのがかなり、現実なんじゃないかなというふうに思っていて、これ、社会保障の敗北といいますか、性産業のほうが、しっかりと彼女たちを支えられているという現実……

 

貧困に苦しむ若年女性が風俗産業を頼る姿を、社会保障の敗北と厳しい言葉で語っています。

 

海外へと旅に出れば、嫌でも固定化された格差を目の当たりにします。

 

けれど海を超えずとも、隔絶された社会のレイヤーを伺い知ることができます。

 

決して努力で超えられない壁ではない。

 

成功者である程そう述べるでしょうが、その言葉を額面通りに受け入れられる人もまた多くはありません。

 

幸福の王子という童話をご存知でしょうか?

 

街の中心に立つ王子の像。

 

純金の体、サファイアの目、剣のつかには赤いルビー。

 

病や飢えに苦しむ人びとへ、王子は自らの体をまとう貴金属をはがして旅のツバメに運ばせます。

 

行為を諌めるツバメの声を抑え、それでも苦しむ人へと運ばせる王子。

 

やがて両目も、全身を覆う純金もなくなり、冬の寒さを超えられなくなります。

 

力尽きて足元に倒れるツバメと、剥げた銅像。

 

町の人たちはみずぼらしい王子の像を見て、「豊かになったこの街にみにくい像は不要だ」と、炉に入れて溶かします。

 

しかし、なぜか鉛の心臓は溶けずに残り、死んだツバメとともに放り捨てられます。

 

そうしてある晴れた日の朝。

 

「この街でもっとも貴いものを見つけてきなさい」

 

そう天の神様に命じられた2人の天使が、砕けた鉛の心臓とツバメをひろい上げる。

 

そんな物語です。

 

僕たちは資本主義の世に生きています。

 

力がある人ほど、自分が与えたところで助けられないという事実を知っています。

 

だからこそ自己と向き合い、己を高め、こうして記事にふれていただける程度に生活の基板を得られています。

 

都知事選挙に向けた演説が繰り返し行われています。

 

それは都を良くするために、弱者を救うためにと、さまざまな言葉が交わされています。

 

そこに本当の意味での弱者は含まれているのでしょうか。

 

僕にはどうしても、彼らが救おうとしている弱者とは、自ら声を上げられる弱者を想定しているようにしか映らないのです。

 

社会的な弱者がその現状を打破するのに、まず必要なことが声を上げることだとしたら。

 

声を上げられない弱者は、ぎりぎりの境目をたゆたうような生活しかできないのでしょうか。

 

僕は思います。

 

本当の弱者とは、今日より明日の自分は幸せになる。そんな夢をこれっぽっちも想像できない人を指すのではないか。

 

そうであるなら僕自身もまた弱者でした。

 

二十歳を過ぎたら実家を出て戻らないよう教わり育ち、23区の公務員試験に合格して上京。

 

しかし、望んだはずの公務員という環境がちっともなじめず、四方八方の「辞めて人生いかなるものぞ」の声を振りきって退職へ。

 

レールに沿う生き方しかしてこなかったため、辞めはしたもの次に何をすれば良いのか分からない現実に気が付きました。

 

それはゆるやかに、けれどたしかな絶望へ。

 

日常で前を向くことができなくなり、やがて薬に頼って寝たきりになりました。

 

当時の僕は、同居の女性が紳士淑女の宿場で働いていたおかげで、かろうじて生き延びていました。

 

しかし同時に彼女が、得た金銭以上にモノを買ってクレジットカードの借金地獄に。

 

クロエ、マルニ、マルジェラ、ルブタン、破れたPTPシート。

 

有象無象が散らばる部屋で、携帯越しの督促を聞き流し、一日一食ふやかしたコメをすすって生き延びる日々。

 

生きてることがただ恥ずかしくて、誰にも何も言うことができませんでした。

 

なんでこうなったんだっけ?

 

あまりに問題が山積していて、もはや何から手を付ければ“フツウの暮らし”に辿り着けるのか分かりません。

 

行政が縦に垂らすサポートの糸の、いったい何を掴めば良いのか。

 

ただ、自分こそが問題なんだ。

 

そう呪いのように言い聞かせる日々。

 

幸か不幸かどれだけ切り詰めても、あと一ヶ月で家賃が払えなくなるという日がやってきました。

 

そう気付いて初めてベッドから起き上がり、手持ちわずかなお金を彼女へ渡し、飛び込んだアルバイトで生計を立て直すことができました。

 

けれど、あと一歩住所まで失っていたら。

 

もしもそこに子どもがいたら。

 

あの頃の僕と同じように、それよりもっと辛い状況で暮らす人たちが確かに存在しています。

 

結局のところ立ち直れたのは、アルバイトに合格できる程度には教育を受けていて、何よりそれでも幸せに生きたいと願ったからでした。

 

日本もやがて、社会的格差が確かなレイヤーとして固定される日が来るのかもしれません。

 

だからこそ言いたい。

 

弱者が声を上げることは大事だし、飛び込む勇気を持って初めて解決することも理解しています。

 

そうでなければ、やがて僕がひとかどの役職を得ることもなかったでしょう。

 

それでも声を上げられない人がいる。

 

幸せになっていいと願えない人がいる。

 

かろうじて生活ができるレイヤーの次の一歩を踏み出せない人は、きっとあなたの隣にもいるはずです。

 

今、手元にお金があるのは「お金が欲しい」と思考したから。

 

今、豊かに生活ができるのは「豊かな生活をしたい」と思考したから。

 

それは誰かを頼って得たものではなく、自らがそう願って掴み、繋がったもの。

 

それだけのことであり、持っている人は誰もが知っています。

 

交換可能な信用さえあれば何度だってやり直せることも。

 

弱者が弱者たる所以は、そう願うことを自らに許せず、生きる、稼ぐ繋がりを築けないからではないでしょうか。

 

この社会で誰か一人が革命者となって、世の中を変えることは不可能です。

 

弱者に声を上げることを求め、小さな政府に夢を見ながら、崩壊前夜の年金に多くが未来を託す国。

 

そうした全てをきちんと分かっているはずなのに、声を上げられない弱者を自由の旗印のもとに煽る人がいます。

 

その扇動は、いま何も持っていない人、自分の頭できちんと考えることができない人にとって、やさしい言葉ではありません。

 

分かっているはずなんです。本当の意味で助けられるのは、せいぜい片手で数えられる程度だと。

 

だから伝えて欲しいのです。

 

何よりまず、「あなた自身が幸せに生きようと願って良い」と。

 

その声が、言葉が、あなたが伝う一本のURLが、少なくない誰かを救う。

 

大きな声は弱者を扇動する為にあるものではない。

 

自分で自分を信じられない人へ、強さを知るあなたにこそ伝えて欲しい。世をまとう空気の色がほんの少し変わるように。

 

そうして自分を信じた人が歩む一歩は、やがて社会を変える道標になる。

 

人の幸せの価値は、決して一面的なものでなく多面に広がるものだから。

 

砕けど溶けない鉛の心にそっと灯火をともすように。

 

みにくくて良い。あたたかい街に住みたい。

 

だから、僕は何度でも言う。あなたには幸せになってほしい。

 

Written by :古越 幸太

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