母と娘~女のケモノ道

今日の書き手川崎 貴子

 

私は、長女が生後7か月から子育てブログを書いている。

id:blue-zoneさんのブログを読んで思い出したのだが、

親になって感じられる幸せ。忘れられない思い。 - なぐりがきノートはてなブックマーク - 親になって感じられる幸せ。忘れられない思い。 - なぐりがきノート

我が子が初めて歩いた日。初めて“パパ”と呼ばれた日。

それがいつのことだったかなんてきっと覚えていられないと思うんです。・・・

当初は、娘の「初めての○○」や可愛いしぐさなどを忘れないために書いていた。

しかし、今読み返してみると、確かに娘の成長記録ではあるのだが、同時に私の成長記録でもある。

 

仕事ばかりしてきた私の人生に、突如現れた「赤ん坊」

この赤ん坊に、どれだけ人生を、母親業を教わったことか。

 

長女との9年間で、私もすっかり「強い母親」だ。

 

そして、この現状は、長女が望み、長女の希望でこうなったような気がしてならない。 

 

 

会社を経営してきて、何度もピンチには見舞われてきたが、リーマンショック以降はご多分に漏れず、弊社も壊滅的だった。

 

取引先は倒産し、売り上げはどんどん下がり、借金が返せず、支払いが滞った。

毎日毎日状況が悪くなり、打つ手打つ手が裏目に出る。

 

ここぞとばかりに近寄ってきて搾取しようとする人に気づかず、助けてくれた人達の期待には一向に応えらない状況。

 

12年間必死で積み上げてきたものが簡単に崩れていく様は、恐怖以外の何物でもなかった。

 

それでも、残ってくれた社員や取引先もあり、当然あきらめることなどできない。

 

 

家庭も当時再婚したばかり。

 

夫は家事と育児を担当していたので、私の会社が潰れれば、全員路頭に迷う事になる。

 

 

毎日ぼろぼろになって帰り、当時4歳だった娘の寝顔を見ながら、

 

「こんなことで負けてたまるか。」

 

と、何度一人で呟いたかわからない。

 

 

そんな状況が一年近く続いた頃、

 

「元妻のピンチは娘のピンチ」

とばかりに名乗りをあげてくれたのは、元夫だった。

 

何とか弊社が通常に戻れるよう、リソースの提供やブレーンや取引先の紹介など、奔走してくれた。

 

そんな矢先だった。

 

 

元夫が、突然死することになる。

 

 

いったい何が起きているのか?

これは現実なのか?

どうしてこんなことになるのか?

 

当時、そんな言葉ばかり、脳内で繰り返していた記憶がある。

 

 

そして、とうとう私は、自分の事を見限った。

 

自分の、経営者としての才能の無さに、大切な人達を手放してきてしまった良心の無さに、一家の大黒柱としての資質の無さにあきれかえった。

 

 揚句、元夫の死の原因まで、私の過去の、何かの判断が間違えたからに違いないと思うに至る。

 

 

何より、一番の被害者は娘だった。

 

幸せにしたいと思って生んだのに、生後1か月からベビーシッターに預けられ、実の父親と離婚と死別の、結局二度も引き離され、私の勝手な激動人生に巻き込んでしまったのだから。

 

 

そんな思いを引きずって家に帰り、娘の隣に横たわった時、娘と目が合った。

 

今まで会社の事などは何も話していなかったが、思わず、

 

「ママ忙しくて、いつも一緒にいてあげられなくてごめんね。」

 

と、娘に言った。

 

すると、

 

 

「ママさ、チーちゃんがどうしてママのところにきたか、しってる?」

 

 5歳の誕生日を迎えたばかりの娘は、私の目を強く見返して問う。

 

 

「うまれるまえに、おそらからみていてー、

 かみさまみたいなひとにおねがいしたの。

  あのつよそうで、やさしそうなひとがいいって。

 いっしょうけんめいはたらいている、

  あの、かっこいいおんなのひとにしてくださいって。」

 

 

 

私は初めて、娘の前で泣いた。

 

そして、笑った。

 

「5歳児に慰められてる37歳の図」が可笑しかっただけじゃなく、これは明らかに、娘の叱責だと思ったからだ。

 

弱ってんじゃないよ、と、

 

カッコ悪いママじゃだめでしょ、と、

 

小さな娘が、そう私に言っているのだから。

 

 

その後は、景気も多少回復し、再びたくさんの人に助けられ、新しい仲間と新たな気持ちで会社を立て直していった。

 

この一件より、私の経営観や仕事観、人生観も変わり、ジョヤンテ以外のチャレンジも試み、今「ぼくら社」の取締役としても働いている。

 

家族も一人増え、現在1歳8か月の次女の子育てにも奮闘中である。

 

最近思うのは、私の子供が二人とも女だった事に意味は無いが、私には大いにあるということだ。

 

二人はきっと、母親である私の生き様を見て育つ。

 

同性である娘たちの目は、多分厳しい事だろう。

 

これからも、私はたぶん失敗したり、余計な事をしたりして生きていくとは思うが、二人の娘の目は常に意識して、未だ続く「女のケモノ道」を歩いていくに違いない。

 

そして、

 

 

「ママ、かっこいいよ。」

 

 

と、娘たちに思われるように、頑張りたいと思っている。

 

 

Written by :川崎 貴子

 

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