マスでもニッチでもない、ぼくらの消費感性
今日の書き手:古越 幸太
なるほど、と膝を打つ記事を拝見しました。
経済評論家の述べることが当たらないのは人の心理を無視しているから - ウェブ1丁目図書館
買い手市場においては、お客さんに商品の価値をわかりやすく伝えなければ売上は増えません。そのためには、仮説と検証を繰り返して、お客さんの心理を探っていく以外に方法はないでしょう。
モノが売れないと言われて久しい今日この頃。
まるで小売を駆逐するかのごときAmazonに、書店をはじめ地域の商店は戦々恐々。
ともすればAmazonとショッピングモールさえあれば、生活には困らないのかもしれません。
どうしてもその2つの店舗では手に入らないもの。
そんなニッチな需要に特化した専門店でしか、生き残れないという論も目にします。
ふと思います。
はたして自分が買い物をする時に選ぶ店は、そのカテゴリーにしかないのだろうか。
そう考えると、少し異なるようにも思います。
先に挙げた3つの店舗で買えるものは、次の商品に絞られます。
商品名が分かる商品
②ショッピングモール
マスマーケティングに基づく売れ筋の商品
③専門特化店
ニッチながら強い需要に基づく商品
僕があえてその店に足を運んで、それでも買いたいと思うもの。
それは、未知の価値を教えてくれる場所です。
誰でもそうですが、自分自身のことを100%分かっている人はいません。
同じように自分の欲しいものの全てを分かっている人も、いないのではないでしょうか。
Amazonではどうしても買えないもの。
それは、商品名が分からない商品です。
「あ、そうそうこれ。こういうのが欲しかったんだよ」と、POPや目の前のディスプレイで初めて気づくものがあります。
厄介なことに、得てしてそれはマスを対象にしたショッピングモールにはありません。
僕もあまのじゃくなもので、どうもモールにある商品のパッケージからは「みんなこれが欲しいんだろう?うちにはすべて分かっているよ」という、マーケッターの微笑を感じてしまうのです。
もちろん大根や牛乳、洗剤など、すぐに冷蔵庫に買い置きたいものを買う時にはとても助かるのですが。
ひるがえって専門店。
これもそのカテゴリーの面白さに気付いていれば、足繁く通うことでしょう。
ですが、そもそもその世界の面白さや世界観を脳がキャッチしていないことには、足を運ぶ対象に入り得ません。
そうして考えていくと、僕が尋ねる店舗には同じ特徴があります。
それはまだ自分が気付いていない面白さを、先回りして提案してくれるということです。
だからこそ時間を割いてその店を訪ねます。
そしてそんな店には、もうひとつ特徴があります。
「わたしの好きな世界」と、「訪れるあなたが好きになってくれるかもしれない世界」、店舗という場を通じて世界観の共有をさせてもらえることです。
それは売り手と買い手という二項対立とは異なる、いまを生きるストーリーの共有です。
20世紀の日本がものの豊かさを目指す社会で、21世紀は心の豊かさを目指す社会になる。
これもよく聞く論調ですが、では、心の豊かさを満たしてくれる店とは一体どんな場所を指すのか。
それはマスでもニッチでもない、ぼくらの消費感性を満たしてくれる第4の店なのかもしれません。
Written by :古越 幸太
ぼくら社2014年2月の新刊!
人の「感性」と「行動」を軸にした独自のビジネスマネジメント理論を研究・開発し、全国から千数百社を超える企業が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」主宰、小阪裕司。
35冊を超える著書ではじめて語る「変わり者と疎まれ、本当の自分を出せずにいる」、そんな生きづらさを抱えている人に向けたメッセージ。
これからは感性の豊かな人、いわば "変人性 "を持つ人の時代。 その生きづらさは時代に必要とされている者の証であり、未来を創造する可能性そのもの。
君は、君がなるべきものにきっとなれる。