ヒトは建前で進化した
id:takeuchさんのなぐさめ上手な営業担当、というような記事を読んで。
出版社の営業担当が知っている編集者の慰め方 - 下戸ですがいつも酔ってます「ロングで売れるよう頑張りましょう」
(発売当初、思ったより売れなかった)...
ぼくら社は本づくりの初心者ばかりなのですが、広告出身の人間として、とても共感しました。
広告の制作現場でも、似たようなやり取りが多いのです。
制作マンを気遣ってくれる素敵な営業さんからの、プレゼン後の電話はこんな感じで始まります。
「クライアント超喜んでくれて、ほぼOKでしたよ!」
「おぉ、それは良かった!プレゼンお疲れさまです!」
と返したところで、だいたい次のように続くのです。
「ほとんどOKなんですけど、ちょっとだけ修正点がありまして・・・」
「この部分はこの方向に変えてもらって、あと、こことあそこは・・・」
ふんふんなるほど、と15分ほどの電話を終えて、メモした修正を振り返りながら、気づきます。
「おい」と。
「ほとんど差し替えやん」と。
こうして制作マンは、日に日に人間を信用できなくなっていくのです。
ただ、僕としてはこういう言い方をしてくれる人って好きなんですよ。
話してる内容が明らかに建前で、っていうかほぼウソで、本音は別のところにあるんだろうなと分かっても、あけすけに本音をぶつけてくる人よりも、優しさを感じるんです。
「そんなの偽善だ!」
「最初から本音の方がコミュニケーションが早い!」
とおっしゃる方は、人間の本質を分かってないか、ご自分が相当にがまん強い。または、鈍い。
僕はこう思ってます。
建前が人類を進化させた、と。
人類文明がここまで発展したのは群れをつくったからで、ここまで大きな群れをつくれたのは、『建前コミュニケーション』能力を発達させたからだ、と。
ヒトは、生きていくために群れた。
群れを維持するために、建前を覚えた。
その結果としての、文明の発展だと思うんです。
ヒトが本音しかしゃべれなければ、きっと文明はできてない。
建前でもいい。いい本ですね、と言ってください。
Written by :下出 裕典
ぼくら社2013年11月の新刊発売中!