働くことに「かくあるべき」など無い
自分の仕事を第三者的な視点で書く記事は、つい興味深く見てしまいます
憧れの業界に就職できた、その先の話 - こじらせ女子のつまらない出来事
私が就職活動をしたときの話に続きまして、情熱のみで無謀な就活をした結果、学歴的にも能力的にも厳しい憧れの業界に何故か入れてしまった私が、その後どうなったかについて。
というのも、僕は大学に行ったことがないので、いわゆる就職活動というものがよく分からないからです。
大学3年生の皆さんは、就活冬の陣というくらいですから、きっと沢山の困難や自問自答を乗り越えて道を見つけていくのでしょう。
正月は実家に帰省、といっても埼玉県なので、混雑した高崎線に揺られ情緒のない家路を辿ります。
焼いた餅なぞつまみながら語らう訳ですが、卓を囲む人間が男だけになると自然と仕事の話になります。
我が家で現在勤めをしているのは3人。
叩き上げで平社員からグループ企業の経営者に至った、ポスト団塊世代の父。大卒一筋幾十年。
父のようなガムシャラモーレツな生き方だけはしまい、と公務員保育士になった無気力世代の僕。専門卒から某社目。
そんな父や兄を見てるか否か、ビル清掃員をするゆとり世代の弟。大卒2年目、現在3社目。
父曰く。
最近の新人は皆すぐに辞めていってしまう。
人事に聞くと「土日に上司から携帯が掛かってきたら、休むものも休めません」とか、「最初に聞いていた話と仕事が違う」とか、くだらない理由ばかりだ。
その後を風のうわさで聞くけど、どうやら皆うちより待遇の良い職場には行けてはいないらしいね。
どうしてそんなに簡単に辞めてしまうのかね、勿体ない。
言うまでもなく、これは僕に対する質問ではなく、隣で餅をすする弟に言っている言葉であろう。
あるいは、自身が歩んできた道のりの肯定と呼ぶのかもしれない。
なんだか何も言わないのも不憫な気がしたので、二言。
「もう、お金や待遇だけでひとを縛れなくなったんだよ。」
「でも雇う側はそれに気付いていないし、当の就活している側の本人も、自分が本当にやりたいことを探しきれずに、なんとなく同調圧力で就職を目指しちゃうからそうなるんじゃないかな」
そう言うと、父は興味があるのかないのか分からないような相槌を打った。
餅を平らげ、酒も進み、弟は自室へ。
何とはなく戻ろうとする弟の手を見ると、薬剤の影響か荒れが目立つので母に尋ねた。
「あの子といっしょに働いているおばさまやお姉さんが、手を見て言うんだって。若い子がいつまでもこんなところにいたらいけないって。でも、いままでで一番のんびり働けてるみたいよ」
そんな弟は、しばらく前に市内のハーフマラソン大会に参加して2位に入賞したらしい。
トレーニングをする時間が持てるようになったそうだ。
かくも僕らは、誰よりも自分が正しいと思いたいし男であれば尚のこと。
どれだけ年長者から「かくあるべき」と言われたところで、やっぱり自分の身をもって酸いも甘いも味わわないと分からないのもこれまた人間。
そんな話をしながら、テレビに映る就活報道を見て思わずにはいられないのです。
人生ここ一度きりと思わず、冬の陣をスキップでも踏むように渡ってみてもそう罰は当たらないのでは、と。
きっと、世界はそんなに狭くない。
Written by :古越 幸太
ぼくら社2013年12月の新刊発売中!